2018.02.01社会問題
インフルエンザで早めの受診は間違い、という現場臨床医からの警鐘
追記(2020年12月)
当記事は2018年2月に投稿しましたが、新型コロナウイルスによる感染症の拡大で世界的な混乱を来している現在にも通じる内容となっています。
医療の最前線から
流行するインフルエンザについて、茨城県つくば市 坂根Mクリニックの内科医・坂根みち子先生が執筆された『インフルエンザで「早めの受診」は間違いです!』という記事がYahoo!ニュースに掲載されました。
※Yahoo!ニュースは一定期間後に削除されてしまうようなので、元記事のリンクを貼っておきます。
⇒ インフルエンザで「早めの受診」は間違いです! | MRIC by 医療ガバナンス学会
坂根先生の主張をかいつまむと以下の通り。
軽症者は診断確定の必要なし
- インフルエンザが疑われたら早めの受診を国が呼びかけているが、そもそもこれが間違い。
- インフルエンザが疑われるときは、早めの受診ではなく自宅療養が基本である。
- 迅速検査の診断は陽性の時はインフルエンザであると確定出来るが、陰性だからといってもインフルエンザではないとは言いきれない。
- 会社や学校も、病院へ行ってインフルエンザかどうか検査してくるように、というのは止めるべき。
- 迅速検査で正確な診断が出来る頻度はそう高くないし、迅速検査で陽性になるのを待っているうちにどんどん周囲の人にうつしてしまう。
- どうしても検査したい人のためには、迅速検査はもっと簡便なキットで市販されることを期待している。
限界を越えている診療現場
- ある人数までは受付でトリアージ(=患者に優先順位をつけること)し、感染症の人は隔離し対応出来るが、キャパシティを越えて患者が殺到した時は感染症の人も感染しやすい持病のある人も同じ待合室で一緒に待つことになり危険増。
- 医療機関がパンクしないよう、重い疾患で通院中の患者さんが安全に治療を受けられるよう、軽い症状の人は自宅待機で治すべき。
- 基本は保湿と休養。一部の漢方薬も有用であろう。
- 抗ウイルス薬は発症後48時間以内の人は使えるが、軽症者には必要ない。抗ウイルス薬を使っても回復までの時間は半日ほどしか短縮しないことも。
- 家は加湿し、他の人に感染させないようにマスクをして、人とのやり取りはアルコール消毒した手でする。
- 熱が出た人は解熱後48時間まで登校や出社を避ける。
「疑わしい人は自宅待機」を徹底
- 自宅待機(stay home)とワクチンを打っておくことを強く勧める。たくさんの人がワクチン接種を受けていれば「集団免疫」で助かる命も多い。
- これが致死性の高い新型インフルエンザウイルスならどういうことになるか想像すると、まず「疑わしい人は自宅待機」を徹底せず、「早めの受診」を勧めていては猛スピードで感染が広がってしまう。
- 各組織は誰かのお墨付きを待つのはなく自らの判断で休むという体勢を整えないと、今後予想されるパンデミックで壊滅的な被害が出るだろう。これは組織として不可欠なリスク管理でもある。
- 日本の医療システムは互助の意識で支え合わないと今後もたない。そのしわ寄せは本当に医療が必要な人に医療が届かない、という形で現れる。
- 国民の受診行動を(正しい方向に)変えるためにメディアが果たす役割は大きい。
是非とも、リンクから元記事のご一読をお勧めいたします。
⇒インフルエンザで「早めの受診」は間違いです! | MRIC by 医療ガバナンス学会
インフルエンザなど感染症の流行を防ぎ、発症数を減らすためには
- ワクチンを接種する
- こまめな手洗い、アルコール消毒
- 三密を避ける(密集、密接、密閉)
- 人前でのマスク着用、咳エチケットの徹底
- 同居家族以外との会食(とくにアルコールつき)を控える
インフルエンザ狂騒曲
これについてTwitterでは、小児科医・疫学者である@Dr_KID_ 氏も大変重要な示唆をツイートされていたので備忘録として残しておきます。
インフルエンザの狂騒は根が深く、今の日本の医療制度の問題点が浮き彫りになっていると思う。
インフルエンザで「早めの受診」は間違いです!(新潮社 フォーサイト) - Yahoo!ニュース https://t.co/RtAbHrK6L1 @YahooNewsTopics — Dr.KID@はてなブログ (@Dr_KID_) 2018年1月31日
この記事はよく書かれていて、多くの点に同意。例えば; ・軽症のインフルエンザ患者に人手と時間が取られ、重症者への対応の障害となっている
・自己免疫疾患やがん患者等、インフルエンザを恐れながら暮らしている人達が、通常の治療ために医療機関に行くことで感染のリスクにさらされる — Dr.KID@はてなブログ (@Dr_KID_) 2018年1月31日
さらに; ・休日の来院患者数が半日で200人を超え、これを医師一人で対応
・医療機関は、本来は諸外国のように肺炎や脳症等合併症が疑われる人に絞り込んで対応させていただきたい この辺りは医療者の切実な訴えと思う。私も同様のことをこの季節になると毎年考えている。が何も変わらない。 — Dr.KID@はてなブログ (@Dr_KID_) 2018年1月31日
また、厚労省のミスリード、つまり; ・具合が悪ければ医療機関を受診(曖昧すぎる表現)
・厚労大臣が「早めの受診」を呼びかけ(早く受診しても検査陰性になる) ・発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を開始すれば、発熱期間の短縮などの効果が期待できます(過剰な処方を煽る) — Dr.KID@はてなブログ (@Dr_KID_) 2018年1月31日
また社会のニーズと医学的な必要性も、アンマッチ; ・診断を付けてほしい人や軽症の受診
・会社や学校は、病院へ行ってインフルエンザかどうか検査してくるように — Dr.KID@はてなブログ (@Dr_KID_) 2018年1月31日
厚労省は医療機関に丸投げするのでなく、きちんと医療機関がうまく回るように制度を整えるのが責務だと思うのですが、アウトプットとして全くでてこないのが残念(何かしら考えているのかもしれませんが)。
— Dr.KID@はてなブログ (@Dr_KID_) 2018年1月31日
また、こちらの記事にある集団免疫の重要性を示す図画も大変分かりやすい。
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