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馴染みの店員はいらない?

先日放送された『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日系)にて、25歳男性の「よく行くレンタルビデオ店の店員に顔を覚えられたくない」という声が紹介されたそうだ。

レンタルビデオ店に限らず「よく行く店の店員に顔を覚えられるのはイヤか?」と番組が500人に聞いたところ、39.2%が「イヤ」と答えている。その理由は以下のようなものが上がった。

・「コイツいつも来てるな」と思われたくない
・クールに買い物できなくなる
・生活感が伝わってしまう
・ウラで変なあだ名を付けられていそう

 

若干自意識過剰な気もするが、それら理由には現代人の「必要以上に人と関わりたくない」という思いが感じられる。根底にあるのは人付き合いの煩わしさか、自信のなさか。

〜 中略 〜

業種では「美容師と顔見知りになるのがイヤ」な人が36.6%も。「差し障りのない会話が面倒」だと感じている人が多いという。

また、薬局では50.6%、コンビニでは48.0%の人が「顔を覚えられたくない」と答えている。

2016.10.10 キャリコネニュース

なんと例として出た業種の中で一番イヤがられているのは薬局だった!

これについて薬剤師の高橋秀和氏が消費者目線でツイートされていた。

なるほど。氏のご意見には完全同意。そして同時に私はこんなリプライを。

(注:OTC… 処方箋なしで購入できる一般用医薬品、DgS… ドラッグストアの意)

ただ文字数が限られるTwitterは言葉足らずになりがちとなる。

そこで以下に、私が表題から考える2つの懸念として補足したい。

一つ目の懸念:素人の選薬には根本的な誤りがあったり、時に副作用も発現する。

現在流通しているOTC医薬品は処方箋により調剤される医療用医薬品と比べて、消費者に届く情報量が比較的多い。

理由は消費者が化粧箱に記載の効能効果や店頭のPOP(キャッチコピーや説明)、またはテレビCMで得た情報を根拠にDgSの棚から直接購入することを前提に作られているからである。

素人が医薬品を購入する際、使用経験があり安心して用いる事ができる銘柄が明確な場合は殆ど問題ないだろう。

しかし初めての症状にどの薬を選ぶべきかが不明の際には慎重になるべきだ。

時にOTC商品は、消費者が得られる情報が多いわりにワンフレーズで端的なため、効能を誤解して使用した例(下痢の腹痛に解熱鎮痛剤を選択したなど)が少なくない。

また誤使用による副作用の発現も当然あり得る。大人でも困るが小児ならば尚更だ。

二つ目の懸念:薬局薬剤師に対する信頼度の低さ。

そして今回のアンケート結果に私が感じたもう一つの重大な懸念は、消費者の薬局(薬剤師)に対する信頼度の低さである。

本来、特に市井の薬局薬剤師は「町の健康アドバイザー」として地域社会の健康増進、病気予防に寄与すべき存在だ。

薬剤師法 第一章 第一条

薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

しかし近年は薬局のことを単なる処方箋と薬の交換所だとか、または大型店舗で沢山の品揃えの中に医薬品も置いてあって便利という程度の認識しかなく、さらには薬剤師などの専門家が常駐している事を知らない人まで居る。

これつまり「これまで多くの消費者が薬局において薬剤師が自分と向き合っていると感じていなかった」という事ではないか。

私たち薬剤師は正確な調剤業務や薬の説明にばかり気を取られて、肝腎の人間関係を築くことが、自分たちが考えていたほどは出来ていなかったのかも知れない。

院外処方が猛スピードで浸透する以前、ちょうど昭和から平成に元号が変わった頃はまだ病医院の門前に乱立する薬局や大型のドラッグストアは少なく、気軽に立ち寄れる昔ながらの「町の薬屋さん」が大勢だった。

私の家業も当にそれで、そこには「医者の患者」ではなく「薬局のお客」が処方箋など持参せず来局していたし、お客と店員が向き合って内輪話や人情話も気さくに出来る光景が色濃くあった。

立ち返って現在の薬局のイメージは、そのようなゆとりのある店舗は滅多に無く、どこも丁寧ではあるものの整然と調剤・監査・投薬をして多数の患者をさばいている調剤専門か、または仮に会話が一切無くても商品を購入することができるDgSの印象ではないだろうか。

セルフメディケーションを正しく推進するために。

ところで、毎年増え続ける医療費の抑制を実現させるための一つの提案として、【蟻の一穴】セルフメディケーションによる医療費抑制は眼前の急務だ。 という記事を以前書いた。

セルフメディケーションとは、「自分で自身の健康を管理する」という概念のことだが、医師や薬剤師などの判断・意見を無視して好き勝手な薬を飲んだり矢鱈な健康法を行うということではない。

医薬品という体に直接作用する商品を希望するならば、たとえOTC(大衆薬)と言えども油断せず、ほんの数秒流れるテレビCMで得られる程度の浅い情報で安易に選択するのではなく、店頭・ネット通販その他いずれの経路で購入する際にも薬剤師や登録販売者の意見を参考にした上で購入することを勧める。

「モノ」だけで繋がっていても信頼関係は育たない。

たしかに消費者が病状・体質や嗜好を知られるのを嫌ったり、購入履歴を知られる気味悪さを訴える気持ちは分からなくも無いが、この時点では未だ消費者と薬局の信頼関係が出来ていない段階であろう。

上述したような昭和ノスタルジーを殊更主張するつもりも無いのだが、50.6%つまり半数以上もの消費者から「薬局とは顔なじみになりたくない」などと言われているのは残念だ。

せめて「薬を買うならば薬局薬剤師のアドバイスも一応聞いておこうか」くらいの事は言われたいし、さらに言えば「あの人に問い合わせれば安心だ」と言われるような薬局薬剤師でありたい。

病医院を受診する用事が無くても、ぶらり立ち寄って近況を話してもらえるような形が理想的。

そのためには薬局の側から積極的に(OTCに限らず)相談応需の体制を整備し、アピールしてみてはどうか。

この体制づくりは店内配置や人員配備などハード面はもちろん、担当するスタッフの知識や機転・会話能力のようなソフトの課題もあり、決して容易ではないだろう。

しかし、そもそも信頼関係とは「人」が互いに胸襟を開いて初めて生まれるものであり、処方箋や薬、サービス(商品)といった「モノ」だけで繋がっていても育てるのは困難だということは認識しておこう。

その他、参考記事。

なお、薬局には厳密な守秘義務を課せられていることも消費者に是非知っておいてほしい。

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