医薬品

65歳以上の高齢者の一人あたりの国民医療費は、65歳未満と比べて約4倍。

厚生労働省は2015年10月7日、2013年度の国民医療費が前年度比2.2%増の40兆610億円であったことを発表した。

国民医療費、初の40兆円超え=13年度、最高を更新―厚労省

厚生労働省は7日、2013年度に病気やけがの治療で医療機関に支払われた国民医療費(確定値)が、前年度比2.2%増の40兆610億円だったと発表した。

年間の医療費が40兆円を突破するのは初めて。1人当たりでは2.3%増の31万4700円となり、医療費全体、1人当たりとも7年連続で過去最高を更新した。

高齢化の進展や医療技術の高度化などが増加の主な要因。労災や全額自己負担の分を除く14年度の概算医療費(速報値)は39兆9556億円だったが、実際には13年度の段階で40兆円を超えていたことになる。

65歳以上の高齢者の国民医療費は23兆1112億円となり、全体に占める割合は57.7%(前年度56.3%)に拡大した。1人当たりでは72万4500円。これに対し65歳未満は17万7700円にとどまっており、約4倍の開きがある。

2015/10/07 時事通信社

この記事の文末から、高齢者の医療費が突出していることが分かる。その理由は後述する「医療機関へのフリーアクセス」であると自分は考えている。

国家予算と社会保障費、そして国民医療費。

朝日新聞デジタルが公表しているデータによると2013年度の国家予算は92兆6115億円、このうち社会保障費に充てた額は29兆1224億円だった。

「税金」、「保険料」、「自己負担金」で賄われる医療費は、診療報酬として医療機関へ、調剤報酬として薬局へ支払われる。ということは、2013年度は保険料と自己負担金を合わせて約11兆円を持ち出した計算になり、非常に大きな金額であることが分かる。

「保険料」については、各保険組合が実質的な財政破綻にかぎりなく近い印象をうける。

かと言って仮に税収を増やすか自己負担額を増やすか、またはその両方を同時に行えたとしても、まるで湯を張った湯船に大きな穴が開いたままで水を注ぎ足すことにしかならず、これだけでは解決できる問題ではない。

2013年度の調剤報酬は7.2兆円。医療費全体の中で占める割合は約18%。

ところで、同じ10月7日に、薬局の調剤報酬が2016年度予算の焦点になる可能性を示唆する報道もあった。(NHK NEWS WEB 薬局が焦点?! 来年度予算)

医師による薬の過剰投与や、複数の薬を服用する際の副作用や相互作用による事故などを減らす目的で、医師と薬剤師の業務を分ける「医薬分業」という制度を1990年代から国が本格的に推し進めるためにぶら下げた人参が、当初高額で設定した調剤報酬だった。

それが右肩上がりで膨らみ続ける医療費と並行して、2013年度には医療費全体の約18%を占める、年間7.2兆円にまで増加したのだ。

また最近では、全国展開している調剤薬局の一部で調剤報酬の不正請求が発覚し、世間の厳しい耳目が薬局に集まったことと、さらに来年度はちょうど診療報酬・調剤報酬・薬価の改定の年でもあるので、世論を追い風に財務省が調剤報酬の削減を図る動きがあるとの由。

一気に成長を続けてきた調剤薬局だけを狙い撃ちしているかのようにも見えるが、調剤報酬(薬局)だけで医療費全体の18%を占めたという数字は大きいと言わざるを得ない。

しかし予想される調剤報酬削減は、これまで収益の原資をほぼ100%調剤報酬に頼ってきたタイプの薬局にとっては、OTC販売やその他、気軽に立ち寄ってちょっとした健康不安などを相談出来る、薬局が元来持ち合わせていた「街の健康ステーション」としての職能を活かした、調剤報酬以外の原資を確保するための布石となるものと期待している。

私が考える、3つの医療費抑制策。

話を戻して、とりわけ医療費を含む社会保障費は、今や100兆円に迫ろうとしている国家予算において最も大きなウェイトを占めており、これをいかに圧縮するかはまさに火急の要事だ。

税収の問題もある。各世代における一部負担金の割合の問題もある。しかしやはり医療費を押し上げている一番の原因は「医療機関へのフリーアクセス」、つまり軽度のけがや病気でも安易に受診してしまう患者や、それに応じた無用の診察・投薬をする医療機関や薬局ではないかと自分は考えている。

そこで今回はこの医療機関へのフリーアクセスを抑制するための提案を3つ記してみる。

  1. 医療費のプリペイド制。… 高度先進医療など、一部常識の範囲から外れるほどの高額な場合を除いては、病医院や調剤薬局での会計時、かかる医療費の例えば8割程度を一時前払(プリペイド)にする。そして後日、自己負担額との差額を請求させるようにしたらどうか。後から戻ってくるとはいえ、一旦は自分の懐からそこそこの現金を支払うということと、差額を請求する手間の面倒さが安易な受診を控えるよう、精神的な抑止力になるのではないかと思うのだ。
  2. 診療報酬・調剤報酬の包括払い方式の推進と、出来高払い方式の縮小。… 医療機関等がどんなにいろいろな検査や薬や注射などの治療を行っても、一日の医療費が定額となるという診療報酬の計算方法のひとつ。現在は特定機能病院など一部でしか採用されていないが欧米では広く普及している。出来高払いは読んで字のごとく。
  3. 国民ひとりひとりのセルフメディケーション意識の啓蒙。…これは以前、【蟻の一穴】セルフメディケーションによる医療費抑制は眼前の急務だ。に記した。

少子高齢化が異常なスピードで進む現在、国家財政に対する危機意識が薄い層(患者だけでなく、医師・薬剤師、その他医療従事者も)のフリーアクセスを適度に制御することが出来れば、必ず医療費を抑制するための一里塚になる。

ただしお気付きの通り、今回挙げた3つの提案は上述の大きな穴の空いた湯船の例に当てはめると、どれも「穴を塞いで湯水の垂れ流しを防ぐ作業」だ。

これに対して、より困難(国民の賛同を得難い)と思われるのが「湯水を注ぎ足す方の作業=財源の追加・確保」なのだが、この大事業の一つに相当するのが2017年4月より予定されている消費税の10%への増税である。→2019年10月に延期が決定。

公約上、消費税増税の目的が社会保障の財源確保であるという以上は、くれぐれも貴重な財源を他の目的に浪費するような愚行なしに、未来へつながる社会福祉充実の実現を担当各位に強く希望する。

その他、こちらも参考にされたい

また今年4月には、医師から処方されたのに正しく服用されず廃棄される医薬品だけでも年間475億円分にもなるという報道もあった(飲めずに「残薬」、山積み 高齢者宅、年475億円分か)。いかに無駄な受診が多いかを物語っている。

この件については、こちらに追記した。年間損失500億円。「残薬」解消の糸口を薬剤師が客観的に考えてみた。