つわり（悪阻）で妊娠の喜びから急降下した時に用いる漢方薬9選

この「ブログで一問一答」カテゴリは、読者の皆様からご応募いただいた質問内容に山浦卓がサクサクと回答していく企画です。

 

Q. つわりに効く漢方薬は？

先日2人目の妊娠が判明しました。

もちろんとても嬉しいのですが、長女の時に妊娠がハッキリと確定する前から食欲不振や軽い吐気といったつわり症状が始まり、安定期に入ってもしばらく続いた経験があります。

今回はまだそこまで具合が悪くなっていないのですが、やはり不安なので漢方薬で対応するならばどんな方法があるのか教えてください。

K.F.さん(30代・女性)

 

A.

K.F.さん、ブログで一問一答にご応募くださり、ありがとうございます。

つわりは妊婦さん本人はもちろんですが、側にいるご主人やご家族もどうしてあげる事もできないので辛いんですよね(T∧T)

先ずは「つわり」の基礎知識

悪阻（おそ）とも呼ばれています。図解常用漢方処方（薬業時報社）によれば、

妊娠の前半期に起こる一種の中毒症状である。早朝空腹時に胸がむかつき、吐気を催し嘔吐したり、生唾が出る程度でなんら栄養障害の起こらないものは生理的で、妊娠月数が進むと自然に消失する。 病的なものは三種に分けられる。

• 軽症者：吐気と嘔吐が頻発し、食欲不振、疲労と衰弱が加わって痩せる。口が渇き、皮膚が乾燥し、嘔吐の時に苦痛が伴い、不眠、眩暈などに悩まされる。
• 中程度者：口渇激しく、口内乾燥し、悪臭を発する。頭痛、眩暈、耳鳴り、不眠等の神経症状を伴う。
• 重症者：嘔吐はおさまるが、衰弱ひどく、脳症状を発し、人事不省になって昏睡に陥り、手足の痙攣をみることもある。

とありますが、メルクマニュアルによると、妊婦の体重が増え続け、脱水を起こさないかぎりは妊娠悪阻と通常の吐気・嘔吐を伴う早朝嘔吐とは区別されています。

妊娠悪阻には漢方薬が最適

妊娠・出産に伴う薬物治療は、催奇形性などの副作用の問題もあり、漢方薬を求められることが沢山あります。

漢方薬を使用する医師の内訳をみると、常に産婦人科が多い実情の背景としても腑に落ちますよね。

また現場で漢方薬を用いた経過を拝見していると、漢方による手当てが妊娠中の体調不良に実に効果的な場合が多い。

※ちなみに妊婦の体調不良の中でも、悪阻、便秘、感冒、こむら返り、腰痛などには比較的に漢方薬が適しています。

 

「つわり」に用いる頻度の高い漢方薬

私たちが「つわり（悪阻）」に、用いる漢方薬を挙げておきましょう。

1. 小半夏加茯苓湯（ショウハンゲカブクリョウトウ）…　軽症者の吐気、嘔吐、眩暈、動悸、食欲不振。
2. 人参湯（ニンジントウ）…　つわりでの衰弱、冷え性、嘔吐、腹痛、下痢。※小半夏加茯苓湯が無効の場合に用いることも。
3. 当帰芍薬散（トウキシャクヤクサン）…　つわりでの衰弱、むくみ、腹痛、尿量減少、出血、動悸、マタニティブルー。
4. 半夏瀉心湯（ハンゲシャシントウ）…　悪心、嘔吐、下痢、胸のつかえ感、胃重感。
5. 半夏厚朴湯（ハンゲコウボクトウ）…　嘔吐、梅核気（咽中の異物感＝のどのつかえ感）、マタニティブルー。
6. 瓊玉膏（ケイギョクコウ）…　冷え、生理不順、不妊、妊娠中の吃逆、虚弱体質、病中病後の体力低下、発育不良。
7. 桂枝湯（ケイシトウ）…　妊娠中の感冒（風邪）。発熱、頭痛、自汗（ダラダラかく汗）。
8. 呉茱萸湯（ゴシュユトウ）…　妊娠による悪心・嘔吐、胃痛、頭痛、下痢、四肢の冷え、めまい。
9. 五苓散（ゴレイサン）…　むくみ、尿量減少、極端な口渇、めまい、吐気、下痢。

※使用頻度の高い順ではありません。
※個々の体質や状態によって薬の選択や用法用量を決めていきます。
※2種類の方剤を合わせて用いる場合もあります（合方）。

上記以外にも沢山の処方があり、同一人物でもその時その時で用いる方剤（薬）が違うことがありますので、自己判断をせずに漢方相談専門の薬局・薬剤師に相談しましょう。

 

ここもご一読ください。

• その選択で大丈夫?薬のプロが教える、後悔しない漢方薬・サプリの選び方
• 市販の漢方薬と漢方薬局で調合される漢方薬は同じ？違う？

 

おわりに

赤ちゃんを無事にご出産されるまで、どうぞ御自愛くださいませ。

 

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