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2016.01.19ブログで一問一答

しもやけに漢方薬が合う理由と、確認しておきたい基礎知識

この「ブログで一問一答」カテゴリは、読者の皆様からご応募いただいた質問内容に山浦卓がサクサクと回答していく企画です。

Q. 子どもの頃から冷え性で、久しぶりに「しもやけ」に。漢方薬は何がよいか?

もともと冷え性で便秘がち。肩こりや頭痛も小学生の頃から感じていました。

冬はしょっちゅう「しもやけ」になったので、そのたびに母が実家近所の薬局から漢方薬を買ってきてくれたのですが、とてもよく効いた記憶があります。

大人になると冷え性はともかく、しもやけは出ていなかったのですが、先日気温が下がった12月のある休日に屋外で長時間スポーツ観戦をして帰宅。

入浴中から、久しぶりにあの独特の感覚に襲われました。

手の指先が赤くて気持ち腫れた状態で痒みがひどい。まさに「しもやけ」です。

そこで「久しぶりに漢方薬を飲もう!」と思ったのですが、いざ調べてみると漢方薬も沢山あって、どれが自分に合うのか分からずサント薬局に相談しました。

B.Y.さん(40代・女性)

 

A. しもやけに漢方薬を求める前に知っておくべき基礎知識

今回の一問一答は現在進行中の相談実例です。ご相談者さまより掲載の許可を頂いて、途中経過を公開いたします。

先ずは「しもやけ」のこと

凍瘡(とうそう)とも呼ばれる症状で、医学百科事典「メルクマニュアル」によれば、

湿気のある冷気への暴露による、局所的領域の紅斑、腫脹、かゆみ。

凍瘡は指に起きることが最も多く、永久的な傷害は起こさない。

軽度の寒冷損傷が、長く続く症状(例:温度変化に対する知覚過敏)を生じるメカニズムは不明。

これらの症状は自律神経系の機能不全によるものと考えられ、効果的な治療法は確立されていない。

また、図解常用漢方処方(薬業時報社)にはより具体的な説明があり、

寒冷によって起こるもので、体質や疾病によってかかりやすく、四肢の末端や耳殻、鼻の先端等の露出部に起こりやすい。

患部の発赤、腫脹があって感覚は鈍くなる。数日して充血紅潮し、灼熱感と痛みを感じるようになり、非常に痒く、軽いむくみを呈する。

原因が去れば(寒冷の軽減)自然に消失する。

凍瘡は体質的なものに左右されやすく、虚弱体質、冷え性、瘀血(ドロドロ血)のある者などは、健康であってもかかりやすい。

漢方では血液の循環や代謝の改善を目指し、冷え性を治しながら自律神経系やホルモン系を調整していく。

とありました。

 

しもやけには漢方薬が最適解

上にもあったように、「しもやけ」には、これといった治療法がありません。そのためか、病院に通ったけどピンとくる結果が見られず、漢方薬局に声がかかる場合は多いのです。

あまり漢方薬に明るくない薬剤師さんなどが、とりあえず紫根と当帰を含む赤紫色の塗り薬『紫雲膏(シウンコウ)』を出しておくパターンを見かけますが、私は出来るだけ根本的なアプローチをしたいので内服薬を検討しました。

頂いたプロフィールと写真から、B.Y.さんは身長153cm、体重48kg、細面で顔色は青白く、また主訴にあったように冷え性の自覚もある。

割と典型的な「しもやけになりやすいタイプ」だったので、今回は『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)』という、しもやけや冷え性の代表的な漢方薬を選択。

恐ろしく長い名前の漢方薬ですよね……

昨年末、末梢の毛細血管内の血流改善を目標としてくろずらっきょ」との併用を7日間。年内に「しもやけ」の発赤と強いかゆみは完全に消失しました。
https://045310.com/anshin_kurozu-rakkyo/

 

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(傷寒論)とは

  • 組成:当帰9 白芍薬9 桂枝9 細辛6 木通6 大棗5 炙甘草6 呉茱萸9 生姜9
  • 効能:温経散寒、養血通脈
  • 主治:血虚寒滞、血脈不通
  • 臨床応用:冷え性… 手足の冷え、顔面蒼白、眩暈、経血少量で薄い、しもやけ、末梢血流改善。

※本方剤は「当帰四逆湯(トウキシギャクトウ)」に呉茱萸と生姜を加えた処方で、温・散・補・通の特徴をもちます。
※また「当帰四逆湯」は当帰が主薬で、四逆(四肢が冷える)症状を治療するという意味があり、これを温性薬の呉茱萸と生姜でパワーアップした形なんです。

 

年明けのB.Y.さんの養生の経過は…

年が明けてから現在の目標は予防。「くろずらっきょ」と併用する漢方薬を当帰芍薬散(下記参照のこと)に変更して、観察を続けていただいています。

しもやけはもちろん、元来の冷えからくる頭痛や肩こりも一切出ていないと言いますが、油断は禁物ですね。

また、今後の経過も機会があれば、当ブログにてご紹介していく予定です。

 

その他、「しもやけ(凍瘡)」に用いられる頻度の高い漢方薬

私たちが、「しもやけ(凍瘡)」に用いる漢方薬を挙げておきます。

  1. 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)… 臨床応用は上述のとおり。症状が収束するまで常用。
  2. 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)… のぼせ気味で便秘の人。腹痛、舌が乾燥している。
  3. 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)… 冷え性、しもやけ、生理痛、月経不順、子宮筋腫、不妊症、瘀血をともなう。
  4. 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)… 本来不妊症や妊娠のシクシクする腹痛に用いる処方だが、応用して、体力が弱く冷え性で血流の悪い人の予防に用いる。
  5. 温経湯(ウンケイトウ)… 四肢の冷え(しもやけ)、月経不順、月経痛、不妊症、婦人病全般。
  6. 温性飲(ウンセイイン)… 養血活血の効能から冷え、また皮膚のかゆみ、乾燥に。
  7. サンクロン軟膏(クマザサ)… しもやけ、床ずれ、やけど、きれ痔、切り傷、化膿性創傷、にきび、耳だれ、皮膚のただれに塗布。
  8. 紫雲膏(シウンコウ)… 消炎、止血、殺菌、鎮痛、肉芽形成促進のはたらき。ひび、あかぎれ、しもやけに塗布。

※使用量の多い順ではありません。
※個々の体質や状態によって薬の選択や用法用量を決めていきます。
※2種類の方剤を合わせて用いる場合もあります(合方)。

上記以外にも沢山の処方があり、同一人物でもその時その時で用いる方剤(薬)が違うことがありますので、自己判断をせずに漢方相談専門の薬局・薬剤師に相談しましょう。

ここもご一読ください。

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