BLOG

2015.12.03ブログで一問一答

漢方薬に含まれる甘草で血圧が上昇し、脳出血につながる可能性はあるか?

先日、当企画「ブログで一問一答」に応募いただいた方から再度ご質問が届きました。 前回の回答はこちら→ 漢方薬の検索でヒット。他の記事も読んだら大変わかりやすく面白く勉強できました。

【お名前】

T.K. 様

【性別】

男性

【年齢】

30

【ご相談の内容・主訴】

山浦先生、先日は拙い質問にも関わらず、丁寧にご返答いただき、大変勉強になります、誠にありがとうございました。

また一つ、知識が増えて、嬉しい限りです、またぜひよろしくお願いいたします。

さて、本題なのですが、実は先日、父が脳出血で入院してしまいました。

父は糖尿病で、最近糖質制限をはじめて、HbA1cも6ぐらいで落ち着いてきていて、そこまで高血圧ということもありませんでした。

糖尿病の薬は飲んでいますが、高血圧の薬は飲んでいません。

ただ、最近腰痛と肩こりに大変悩まされているようで、疎経活血湯を飲ませてみようと思ったのですが、あいにく切らしていたため、葛根湯+頓服で芍薬甘草湯を飲ませました。

カンゾウが被っており、血圧が上がる可能性は考慮していたのですが、頓服ですし、3日分だけだったので、大丈夫だろうと思ったのですが…

(葛根湯+芍薬甘草湯で1日のカンゾウ摂取量8g)+マオウ

その二日後に脳出血で倒れてしまいました。

因果関係は分かりませんし、お医者さんにも確認したところ、それが原因ということは無いだろう、とのことでした。

しかしながらタイミングがあまりにも良すぎるので、ある程度下地はあったとしても、引き金を引いてしまったのではないかと…

山浦先生は非常に漢方やその他の薬の事も詳しく、先日の質問で大変丁寧にご対応いただいた縁がありましたので、大変ぶしつけながら質問させていただきました。

実際にカンゾウ8gでかなり血圧は上がるものでしょうか?また昔から脳出血の原因になりうる、と言われているものの具体的な案件は見つかりませんでした。

本人も見ておらず、一般論でしか回答出来ないと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

(原則原文のまま。表現に問題がある部分は、言葉をかえてあります。)

【山浦より回答】

先ずはお見舞い申し上げます。

さてご質問の件ですが、当然可能性はゼロではありません。ただ…… 。

「ブログで一問一答」は山浦がズバッと回答する企画なのですが、歯切れが悪くてごめんなさい…… (・_・;)

甘草と偽アルドステロン症について

甘草について、ちょっとおさらいをしておきましょう。

甘草(カンゾウ)は日本で流通している漢方薬の多くに含まれる生薬の一つ。薬効成分はグリチルリチンで鎮痛作用、鎮痙作用、鎮咳作用、抗炎症作用が有名。

グリチルリチンは、血圧を上昇させる副腎ホルモンのアルドステロンと似た構造をしているので、過剰摂取によって高血圧症、低カリウム血症、むくみ等の「偽アルドステロン症」があらわれることがあります。

一般的にはグリチルリチンの摂取量の上限は1日7.5gと言われていますが、これを超えたから必ず副作用が出るわけでも、これを下回れば絶対安全ともいえません。

糖尿病と血圧、腎臓との関わり

脳出血のほとんどは高血圧症が基盤にあって、脳の深部の細い血管が破綻して脳実質内に出血を起こす高血圧性脳内出血です。

今回のケースが、もしも甘草によって引き起こされた(本人にとっての過剰摂取)と仮定するならば、次の2つの事柄のうちどちらか、または2つ同時に、起こった可能性が考えられます。

  1. 軽度とはいえ、糖尿病の既往があったお父上の場合、脳血管の中でもとりわけ細い、毛細血管や微小血管の動脈硬化が進行していた。
  2. また摂取した漢方薬に含まれる甘草(グリチルリチン)によって偽アルドステロン症(低カリウム血症と血圧上昇)が発現した。

脳内に限らず、血圧が上がり血管が脆くなっていれば、血管が破裂(破綻)することは物理的にみても不思議ではありません。

またさらには、甘草の大量摂取で腎機能低下が起こりレニンという血圧を一定に保つ働きを示す酵素の分泌量が下がることもあるので、T.K.さんが書かれている通り、実際の因果関係を判明させるのは非常に困難かと思います。

スクリーンショット 2015-12-03 15.33.53
協和発酵キリンHP「腎臓機能低下と高血圧」より引用。
http://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/hypertension/

漢方薬の乱用に注意

身もふたもありませんが、事ここに至っては原因究明もさることながら、お父上の予後をいかに安定、改善させることが出来るかに尽力するほかありません。

今後もしもお父上に漢方薬を勧めることがあれば、基本的には甘草を含まない方剤を選択すると無難でしょう。もちろん複数漢方薬の併用は避ける。

前回もお伝えしましたが、自己判断での漢方薬使用は控えて、必要ならばお近くの漢方の専門薬局に相談してみてください。きっと知恵を提供してもらえるはずです。

参考

甘草を含む漢方薬

  • 芍薬甘草湯
  • 甘草湯
  • 四君子湯
  • 大黄甘草湯
  • 二陳湯
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯
  • 芍薬甘草湯
  • 甘麦大棗湯
  • 調胃承気湯
  • 安中散
  • 十味敗毒湯
  • 小柴胡湯
  • 炙甘草湯
  • 清上防風湯
  • 平胃散
  • 半夏瀉心湯
  • 釣藤散
  • 苓桂朮甘湯

【厚生労働省作成】「偽アルドステロン症」重篤副作用疾患別対応マニュアル http://www.pmda.go.jp/files/000145004.pdf

また高脂肪食誘発性肥満ラットに、甘草の主要成分であるグリチルリチン100mg/kgを、28日間摂取させた実験で、血糖値の改善および皮下脂肪組織における脂質代謝酵素の増加に伴う、総コレステロールならびにLDLコレステロールの低下と同時に、HDLコレステロールの上昇が見られたことから、甘草は糖尿病予防効果ならびに動脈硬化症などの生活習慣病予防効果が期待されています。

Glycyrrhizic acid improved lipoprotein lipase expression, insulin sensitivity, serum lipid and lipid deposition in high-fat diet-induced obese rats. - PubMed - NCBI

その他、漢方薬に関連する記事

ご相談希望の方へ

山浦卓(薬剤師/医学博士)と対面での個別カウンセリングをご希望の場合はこちらからお願いいたします。

0120-045-310(通話無料)
またはWebから。 https://reserva.be/santo/

『ブログで一問一答』へのご質問を募集中です

こちらからご応募ください! https://045310.com/ichimonitto-form/



ご予約・お問い合わせ

ご予約はお電話または
コンタクトフォームより
お問い合わせください

0120-045-310