2014.06.05四方山ばなし
現実逃避する若い薬剤師に言っておきたい事と甘酸っぱい青春の思い出
とある掲示板でみかけた、若い(20代後半か30代前半くらいだったと記憶している)薬剤師の投稿に対する雑感を。
以下、投稿内容の要約。
- 潜在的にパワハラを受けていた職場(調剤薬局)がマトモな調査もせず不当に解雇され納得がいかず、会社側に不服を申し立てたが、「調査の結果、会社に非はない。解雇理由通告書をみて反省するべき」と一方的に却下・非難までされて取りつく島も無い。
- 解雇の理由と直結するかどうかは不明だが、この薬剤師は過去に患者とのトラブルが有ったものの、彼曰く明らかに患者に非があった。
- 調剤薬局の薬剤師の現状に辟易したので、以前目指していた医師を再度志そうと考えている。将来は開業し、臨床に強い薬剤師を育てること、薬局と協力し、医院と薬局の関係性のロールモデルを造り上げるのが夢。
1.と2.については彼の主観でしかないので全く興味がわかなかったのだが、3.の書き込みを目にした時にふと妙な感覚を覚えた。
誰のために努力をするのか
一見よい内容かと錯覚するが、要するに「就職した調剤薬局が自分と合わず幻滅した。薬剤師という職業の限界を感じたので、実は前から夢見ていた医師免許を取って理想的な仕事をしたい」という発想はいささか短絡的で幼い。
少しだけ考えてみてほしい。もしも猛勉強して医師免許を取得できたとしても、薬剤師として出来うる仕事を追求せずに逃げた人がどうして「臨床に強い薬剤師を育てたり」、その他書かれているような立派な仕事が出来るのか?
そもそも資格などというものはキャリアップよりもむしろ、スキルアップのための手段であるべきで、言いかえれば自分のためというよりも、真に顧客の役に立てるために取得するものだ。
ある国家資格を既に保有・活用しながら、「思うところあり結果的にもう一つ別の資格も取った」という人と話すと、その根拠には何よりも先に相手に対する使命感が溢れている。
自分の知る限り、活き活きと仕事をされている複数ライセンス保持者はそういった志の高い人ばかりで、その当時置かれていた状況が嫌で別の資格を取ったなどという話は聞いたことが無い。
あっちの水は甘いか
ところで医師として働いている友人と現場の話をしていると、薬剤師の労働環境は拘束時間や業務の肉体的・精神的負担のどれをとっても多くの医師や看護師などと比べて過酷ではないように感じる事が多い。
病医院ではたらく医師や看護師は組織内の人間関係だけでなく、近年はモンスターペイシェントと呼ばれる輩などからの圧力にも晒されて理不尽・無情な厳しい状況に立たされる場面が多々あるのではないか。
今のところ引く手あまたの市場で転職先も確保しやすい薬剤師が、社内のゴタゴタ程度で音を上げているようでは厳しい医師の仕事は務まらないだろうし、むしろしがらみやらゴニョゴニョやらが多そうな白い巨塔とも呼ばれるあちらの世界を生き抜くことの方が困難なのではないかと思う。
今いる環境で成功しない人は、別の環境でも成功出来ない
それにしてもなぜ、見ず知らずの若い薬剤師のコメントに対してこんなに思いを馳せたのかを考えてみると、まるで20数年前、大学に入学したばかりの頃の自分を見たように思えたから。
浪人した挙句に志望校をことごとく落ちて2次募集にすべり込むようにして入った、当初は受験する予定すらなかった地方の大学。視野の狭かった当時、自らの努力不足を棚に上げて「自分はこんなところに居るべきじゃない」などと分不相応にふてくされて、もう大学を中退して薬剤師を目指さずに、全く別の仕事に就こうかとさえ真剣に考えた時期もあったが、今思えば本当にガキだった。
しかしあるとき恩師から、「今いる環境で成功しない人は、別の環境に逃げても成功出来ない」と諭されて目が覚めた。留年や卒業延期に怯えながらも何とか新卒で国試に合格。ようやく社会人になり調剤薬局勤務を経て、現在は漢方相談専門の薬局を切り盛りしている。
まだまだ自分の思い描く「成功」には遠く及ばないが、遣り甲斐のある仕事に没頭できていることは幸せだと素直に思う。
ということで、妙なシンパシーを感じた彼に言いたいことは…
薬剤師が活躍できる世界は調剤薬局や病院、ドラッグストア、企業だけではない。きっとあなたがまだ知らない職場がたくさんある。
「身を置いた職場で精一杯努力したが人間関係や労働条件などがどうしても合わなかった。こうなったら転職して心機一転やったるぞ!」というくらいの気概があれば、ご両親をはじめ周りの人達も理解・応援をしてくれる。
遠慮近憂。近くにいる青い鳥は、意識を変えて探してみれば必ず見つかるだろう。
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