BLOG

2014.10.10メディア出演・掲載など

厚労省「健康な食事」のあり方に関する検討会の最終報告に3つの懸念

先日、フジテレビ系列の報道番組 FNNスーパーニュースの、『コンビニ弁当にも!?新設”第2のトクホ”・食品業界の期待と困惑』という特集にて、僭越ながらカメラの前でコメントをさせていただいた。

ちなみに今年8月に山浦卓のブログ、Yahoo!ニュース、BLOGOS、そしてシェアーズカフェ・オンラインにも掲載された「コンビニ弁当で健康に?厚労省が来年4月に認証マーク導入という愚」という記事を読まれたことが、今回私に白羽の矢が立った理由だそうだ。※本稿と併せて是非ご一読を。

1食の栄養基準を示す、「健康な食事」の報告書

10月6日、厚生労働省(以下厚労省)検討会は「健康な食事」のあり方に関する検討会(座長=中村丁次神奈川県立保健福祉大学学長)を開き、最終報告書をまとめた。
kenkounashokuji-mark

「健康な食事」の認証マーク

日本人の長寿を支える観点から、主食、主菜、副菜でそれぞれ1食当たりの栄養摂取基準を初めて算定。スーパーやコンビニ総菜などを対象に、基準を満たした商品に付けられる認証マークを作った。

消費者が簡単に栄養バランスに優れた食事を選べるようにする他、同検討会は「世代を問わない食育にも貢献できる」と期待する。

1食当たりの栄養摂取基準は、主食のご飯やパンなら300キロカロリー未満で、量だと40~70グラム。食物繊維を摂取するため、このうち押し麦や玄米を2割程度含むこととした。今年中に農水省と共に具体的なガイドラインを作成し、2015年4月からの運用を目指す。

認証マークは審査などはなく、基準を満たせば製造業者やスーパー、直売所などの販売店が自主的に表示できる。使用状況を国に報告する仕組みをつくり、今後、誤表示への対応も検討する。

認証マークは一般から公募、同日の検討会で114点の中から決めた。3色で主食(黄色・稲穂)、主菜(赤・魚のうろこ)、副菜(緑・野菜の葉)を表現し、それぞれの基準を満たした場合に色を付けることで、消費者に分かりやすくした。

同検討会は、生協やコンビニ、健康器具メーカー関係者らを委員に13年6月から健康維持に役立つ食事の基準作りを議論してきた。

政府が決定した成長戦略でも、疾病予防効果の根拠に基づく適正な運動量や健康な食事の基準を策定することを掲げている。

2014年10月7日 日本農業新聞

放映当日は、ちょうど台風18号の関東地方への接近・通過と重なったためか、予定では15分間と聞いていた特集の尺は約10分程に短縮された編集となっており、流れからして終盤に登場予定だったのであろう私がカメラに向かって話したコメントの大部分はカットされ、文字通り一言二言でコーナーはあっさり終了してしまった。

そこで残念ながら一部しかオンエアされなかったが、今回の「健康な食事」のあり方に関して私が視聴者にお伝えしたかった懸念事項を、改めて次の3点にまとめて記しておく。

【1】「内食」よりも「中食」?

飲食店で提供される食事=「外食」と、その対語で家庭で吟味された食材を調理された食事を表す「内食(うちしょく)」、コンビニやデパ地下などで加熱調理された惣菜を中心としたおかず=「中食(なかしょく)」とある中で、まるで厚労省が国民に対して「内食」よりも「中食」を推奨しているかのような誤解を招く恐れはないのか?ということ。

【2】添加物の種類や使用料、食材の原産地(国)についての基準は無いのか?

「健康な食事」の基準は、栄養素の含有量や塩分使用量の制限だけでなく、添加物(保存料、香料、着色料など)やその使用量の明記、食材の原産地(国)の記載といった縛りを強化するべきではないのかということ。

でないと不衛生・不誠実な国から輸入された食材に、添加物を大量に用いた「健康惣菜」や「健康弁当」を合法的に流通させることが出来る。

【3】「健康な食事」の認証マークが自己申告制で本当に大丈夫なのか?

2.でも触れた添加物や原産地など、多くの消費者がすでに抱いている不安要素についての縛りが事実上無い上に、第三者の審査を受ける必要も無いとなると、倫理観の無い企業が食品偽装問題を起こすことなどは容易に想像出来るということ。

…… 以上から、「健康な食事」の認証マークは出来合いの惣菜や弁当を求める際の一つの物差しにはなるかも知れないが、今やコーラのような、およそ健康とは縁遠い商品にまで表示されてしまっている「トクホ=特定保健用食品」と同様に、今回の認証マーク付きの「健康惣菜」や「健康弁当」を食べることで、本人やその家族が必ずしも健やかな状態になるとは到底思えないのである。

それ故に私はマークの呼び名は「健康な食事」ではなく、せめて「合格」や「基準をクリアしている」といった表現にするべきだと考えている。

参考:日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 報告書(案)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000060212.pdf

追記:

2015年3月23日の報道によれば厚労省は急遽、予定していた4月からの導入を見送ることを決め、基準などを見直すことにしました

厚労省「健康な食事マーク」の4月導入を目前に急遽見送り。
https://045310.com/kenkounasyokuji-mark-enki-kettei/

「食事と健康」に関しては、次の記事も参考にされたい

山浦卓 横浜漢方サント薬局 薬剤師 医学博士

この記事は、こちらの各メディアにも掲載されました

  • Yahoo!ニュース
  • BLOGOS
  • シェアーズカフェ・オンライン


ご予約・お問い合わせ

ご予約はお電話または
コンタクトフォームより
お問い合わせください

0120-045-310