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栄養素の意義を取り違えている

先日、読売新聞に掲載された記事には驚かされた。コンビニやスーパーで販売されるお弁当やお惣菜の一部に、国が「健康な食事」のお墨付きを与えるという話。

コンビニ弁当に「健康」印…厚労省が来春導入

厚生労働省は来年4月、コンビニエンスストアの弁当やスーパーの総菜など加熱調理済み食品に「健康な食事」の認証マークを導入する。

4日の検討会で、成人の1食分の栄養素量などの認証基準案が示された。また、同省は29日まで、認証マークのデザインを公募する。

認証は、健康増進に必要な栄養素やエネルギー、塩分量の基準を満たした1食単位。主食、主菜、副菜の1品ごとでも認証し、組み合わせて食べることも可能だ。製造・販売元には認証商品の報告を義務付ける。

基準案は、国民の食事の実態や栄養摂取基準を踏まえて分析した。主食は1食あたりの炭水化物が50~70グラムで、うち、玄米など精製度の低い穀類が2割以上と規定。

魚や肉などによる主菜は、たんぱく質が12~17グラム、野菜やキノコなどの副菜は重量として100~200グラムとした。1食のエネルギー量は計650キロ・カロリー未満、食塩は3グラム未満とした。

マークは原則カラーで、主食、主菜、副菜を判別しやすいデザインを公募。

2014年8月5日 読売新聞

栄養素量に基準を設けてこれをクリアすれば認証を得られるというが、この認証は自己認証だという。つまり国や第三者機関が検査するわけではなく、基準を満たした商品に業者が自らペタペタとシールを貼って棚に並べるのだから、偽装問題なども恐らくでてくるのではないかと思う。

栄養素はあくまでも人が健康に生きていくための必要最低条件でしかない。これが豊富だからといって必ずしも健康になれるような錯覚を与えてはいけない。これについては『【見直される食の機能性】6大栄養素と非栄養素、それぞれのはたらき』という記事を参考にして欲しい。

いくら栄養素がそこそこ含まれていたとしても、保存料や着色料などの添加物を大量に用いて加熱調理した「健康」弁当や、「健康」惣菜を食卓に並べても、国民の健康を増進させることができるとは到底考えられない。

導くべき正しい方向性は

本来、必要な栄養素をバランスよく摂取した上で適度な運動をして、なおかつ喫煙や過剰な飲酒など健康に無益な生活習慣を出来る限り減らすことで、はじめて健全な生活を送ることが実現するというのに、とってつけたような「お墨付き」で国民を惑わすのはやめて欲しい。

どうしても評価したいのならば、たとえば最低限の栄養素量が含まれている、または塩分などの上限を超えていないという意味で基準をクリアしている「合格」といった表現にするべきではないか。少なくとも「健康」という表現はあり得ないだろう。

厚労省といえば常識的に考えればむしろ「家庭で素材を吟味した手製のおかず」を積極的に推奨こそしても、出来あいの弁当や総菜は肯定しない、という姿勢を示すべき役所だと思う(現実に毎食手の込んだ料理は無理だとしても)。

ともすれば、容器に貼ってあるおかしな「認証マーク」のせいで「コンビニ弁当を食べると健康になれる」などという誤った認識が全国的に浸透して、子ども達の弁当をコンビニで済ますことを是とする親が出現するおそれも大いにあるご時世だ。

特にこれからの日本を担う次の世代を抱えるご家庭では、愚策に翻弄されてご家族の健康づくりに大切なポイントを見誤らないよう、くれぐれもお気をつけいただきたい。

追記:
2014年10月6日に出された検討会最終報告の報道に触れて、本稿の続編(まとめ記事)を書きました。
厚労省「健康な食事」のあり方に関する検討会の最終報告への3つの懸念。

「食事と健康」に関しては、次の記事も参考にされたい

山浦卓 漢方サント薬局 薬剤師 医学博士

この記事は以下のメディアにも掲載されました。